| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-269 (Poster presentation)
植物の種子は栄養価が高く、様々な昆虫が主要な餌資源として種子を利用している。しかしながら、多くの場合、種子は常に生産されるわけではなく、ごく限られた時期にしか生産されない。その極端な例として、東南アジア熱帯雨林での一斉結実現象があげられる。
当地域の低地フタバガキ混交林では、優占樹種を多く含むフタバガキ科をはじめ、高木から低木、つる植物まで、様々な分類群に属する植物が、数年に一度の不規則な間隔で同調して種子生産を行う(一斉結実)。一斉結実への参加頻度は樹種によって異なるため、一斉結実期ごとで結実を示す樹種の構成は異なる。
先行研究により、一斉結実期に大量の種子を生産するフタバガキ科の種子は、ゾウムシ、キクイムシ、小蛾類に属する種子食性昆虫によって加害されることが知られている。しかし、これらの種子食性昆虫が、不規則かつ長期の間隔で生産される餌資源に対して、どのように応答しているのかはほとんど明らかになっていない。
マレーシア・サラワク州に位置するランビルヒルズ国立公園では、1992年から現在までの23年間に発生した7回の一斉結実期で、種子食性昆虫が採集されている。本研究は、この長期データをもとに、フタバガキ科の種子から得られた種子食性昆虫の群集構造の超年変動を明らかにすることを目的とした。出現した種子食性昆虫を大分類群(ゾウムシ、キクイムシ、小蛾類)に分け、大分類群ごとの出現個体数の割合を算出した。また、開花頻度の異なるフタバガキ科5種について、樹種別で同様の割合を算出した。その結果、フタバガキ科の種子食性昆虫の群集構造は、各一斉結実期で大きく異なり、予測性の低いものであることが示された。