| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-272 (Poster presentation)
一般に両生類幼生(おたまじゃくし)は雑食性で採食ニッチが重複していると考えられている。また,捕食者や競争者の存在や餌量によって食性が変化する可塑性が知られている。しかし,マダガスカルのラノマファナでは少なくとも44種のおたまじゃくしが渓流内に生息し,これらの口器の形態から8種類の採食ギルドに分けられ,食性の特殊化が示唆されている。
ラノマファナの渓流に同所的に生息するおたまじゃくしとその餌候補の安定同位体比を測定し、採食ニッチを推定した。採集したおたまじゃくしは5タイプの採食ギルドに分類できた。安定同位体比による推定では、一般型の口器を持つ種は、種によって炭素同位体比の大きく異なったが、窒素同位体比の違いは小さく、主に藻類や昆虫(死体)を食べていることが示唆された。一般型で優占種であるBoophis quasiboehmeiは、飼育下では落葉をよく食べたが、安定同位体比からは落葉が主たる餌とは認められなかった。漏斗型口器は、炭素同位体比の違いは小さく、餌の種類がより限られていることが示唆された。急流に生息する吸盤型口器は、一般型より窒素同位体比が小さく、餌中の付着藻類の割合が大きいことが示唆された。砂食型のBoophis picturatusは窒素同位体比が大きく、捕食性あるいは動物遺骸を主に食べていることが推測され、従来考えられたように間隙中の珪藻が主たる餌ではないことが明らかとなった。