| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-307 (Poster presentation)
血縁関係の近い個体同士は同祖的な遺伝子を共有する確率が非血縁個体と比べて高い。そのため、血縁者間では様々な協力行動がみられることも多い。配偶者等の資源を巡るオス間の闘争行動では互いに傷を負うリスクやエネルギーの消耗といったコストがかかる。そのため、激しく闘争をおこなう種では、血縁者間の闘争は非血縁者間の闘争に比べて互いの攻撃性が弱まることが予測される。コオロギ類はメスや鳴き場所を巡ってオス同士が激しく争う。また、交尾時に血縁者を避けるといった血縁者識別能力のある種も複数種で確認されている。そこで、タイワンエンマコオロギTeleogryllus occipitalisを材料に、血縁関係が闘争行動に与える影響を検証した。なお、血縁者の識別には遺伝的な類似度等の手がかり以外にも、同じ場所で育ったといった非遺伝的な手がかりも重要である。そこで、血縁者ではあるが育った容器は異なる個体も用意して実験をおこなった。その結果、闘争行動の強度には血縁関係も同居の有無も有意な影響を与えていなかった。また、全86試行中7例でオス同士の求愛行動が観察された。これらの結果から、タイワンエンマコオロギの闘争行動に対する血縁関係の影響について議論する。