| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-308 (Poster presentation)

グッピーにおけるメスのパーソナリティと配偶者選好性

*佐藤綾(群馬大・教育)

性淘汰理論は、メスが特定の形質をもつオスとの配偶を選択することを説明する。しかしながら、野生集団において、選ばれるオスの形質には多様性が維持されている。パーソナリティとは複数の状況に渡って個体が示す一貫した行動の傾向のことを指し、一般に臆病さ/大胆さの指標で数量化される。個体内で複数の行動が関連しており、それぞれの行動に異なる淘汰がはたらけば、ある1つの行動のみを見ると、その行動は個体間でばらつくと考えられる。本研究ではグッピーPoecilia reticurataを用いて、メスのパーソナリティと配偶者選好性の関連を調査した。個体のパーソナリティを新奇環境におかれた時の行動、および捕食刺激に対する行動から大胆さ/臆病さとして数量化した。本種のメスは体色が鮮やかなオスとの配偶を選り好む。本研究ではモニターに表示されたオスの映像を用い、メスが体色の派手なオスの映像と地味なオスの映像に反応している時間をそれぞれのオスに対する選好性として数量化した。配偶者選好性は、メスに捕食刺激を与え、捕食刺激を与える前と後で計測した。結果、メスの大胆さ/臆病さは派手なオスに対する選好性と関連していなかった。しかしながら、メスの大胆さ/臆病さは体色によらずオスの映像に応答している合計の時間と関連しており、臆病な個体ほどオスの映像に応答している時間が短いことが示された。また、捕食刺激を与える前後において、臆病な個体ほど捕食の刺激を与えると、オスに近づく時間が短くなっていた。これは、臆病なメスほど配偶者選択に費やす時間が短く、一方で、大胆な個体は捕食の危険があっても配偶者選択に時間を費やすことと示している。このことは、対捕食者行動と配偶者選択行動の間の関連を示し、双方の行動にかかる淘汰が、メスの配偶者選好性のばらつきを説明するものと考えられる。


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