| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-315 (Poster presentation)
アカリンダニAcarapis woodi(以下、ダニ)は、体長0.1mmの微小な寄生ダニで、ミツバチの胸部気管内で繁殖し、宿主の飛翔および発熱能力に影響を及ぼす。かつて、ヨーロッパやアメリカ大陸において、セイヨウミツバチApis mellifera(以下、セイヨウ)で大流行した本ダニが、2010年にニホンミツバチApis cerana japonica(以下、ニホン)より初めて確認された。日本全国のダニ寄生率を調査した結果、セイヨウでは寄生が確認されなかったが、ニホンでは本州全域に寄生が拡大していることが明らかになった。室内実験でも、セイヨウよりニホンにおいてダニの寄生率が高いことが示された。本研究では、ダニが宿主間を移動するためにミツバチ体外に出た際に、ミツバチがそれを払い落す行動(グルーミング、以下GR)が見られることに着目し、両種におけるGR行動の比較を行った。ダニをミツバチ胸部背面に付着させると、両種ともにGR行動が誘発されたが、GRを行った個体の比率は、ニホン(45%)よりもセイヨウ(69%)で高かった。また、GRを行った個体のうち、ダニの除去に成功した比率も、ニホン(57%)よりもセイヨウ(77%)で高かった。さらに、GRを行った個体について、一般化線形モデルを用いて解析した結果、「ダニの除去」に対して、影響が見られた変数は「ミツバチ種」のみで、「GR回数」と「GRが誘発されるまでの時間」の影響は確認されなかった。以上より、ミツバチ2種間のGR行動の違いが、両種における寄生率の差を導いていることが示唆された。