| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-318 (Poster presentation)
いわゆるまずい餌動物には、自身が有益でないことを捕食者に伝える警告シグナルを持つことで効果的に捕食回避を行うものがいる。ツチガエルは捕まえたときに特有のにおいがすることで知られ、このにおいは皮膚腺から出る分泌物に由来する。この皮膚分泌物にはシマヘビの飲み込みを妨げることで捕食を回避する効果があり、本種が飲み込めないエサだと学習したヘビは、この皮膚分泌物でコーティングされたエサに対して舌だしはするが咬みつく回数が減少することが確認されている。つまり、ツチガエルの皮膚分泌物には、においで学習した捕食者に対して食べられないエサであることを知らせる警告シグナルとしての役割があると考えられている。また、このにおいは捕食者だけでなく同種他個体に対しても行動を抑制させる効果があることがわかっており、においを捕食者が接近しているcueとして捕食回避を行うことが示唆されている。においを発するカエルの報告は多数あるが、成分分析のような詳細な研究はわずか7報でありにおいの機能は繁殖に関わるものを除いては全くわかっていない。そこで本研究では、捕食者や同種他個体に対しても影響を与えるツチガエルの皮膚分泌物のにおいの成分を明らかにすることを目的とし、皮膚分泌物の揮発性成分のGC/MS分析を試みた。サンプルは佐賀県で捕獲したツチガエルを主に使用したが、同所の他種(ニホンアカガエルとトノサマガエル)、また別の地域の個体(新潟県で捕獲)を用いた。分析の際には1)SPME法2)加熱脱着(チューブ)法3)溶媒抽出法(エーテル抽出・ヘキサン抽出)を行った。1)SPME法において本種は他種のカエルよりも大きな固有のピークを有しており、さらに地域の違いによって主な成分に違いはないが、含まれる比率に違いがあることを示唆する結果が得られた。