| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-321 (Poster presentation)

野生ニホンザルの腸内細菌叢はどのように変動するのか

*澤田晶子, 栗原洋介, 早川卓志(京都大・霊長研)

屋久島の野生ニホンザル (Macaca fuscata yakui) は季節に応じて様々な食物を食べる。本研究では、採食内容と密接に関連するといわれる腸内細菌叢に着目し、同様の季節変動がみられるのか検証した。オトナメス3個体を対象に1年を通じて調べたところ、腸内細菌叢構成により大きく影響するのは、個体差よりも季節差であることがわかった。特定の細菌種の比率から腸内細菌叢を3つのタイプ(エンテロタイプ)に分類できるが、ニホンザルは採食内容にかかわらずPrevotellaタイプであることが判明した。これは、炭水化物中心の食事と関連するエンテロタイプであり、屋久島のニホンザルの主要食物が果実・種子・葉といった植物性食物であることを反映していると考えられる。8月には、採食時間の70%近くを昆虫食に費やすなど採食内容の大幅な変化がみられたが、エンテロタイプは変化しなかった。一方で、同じエンテロタイプであっても、細菌叢の構成は季節によって異なっていた。葉食期には、セルロース分解菌を含むことで知られるTreponema属の増加がみられた。これにより、ニホンザルは繊維含有量の高い葉を効率よく消化・吸収することができているのではないかと推測する。


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