| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-323 (Poster presentation)

生物の動画を博物館の標本として収蔵登録する試みと想定される課題

*石田 惣(大阪市立自然史博), 中田兼介(京都女子大), 西 浩孝(豊橋市自然史博), 藪田慎司(帝京科学大)

自然史博物館では多種多量の生物標本を収集し保管している。これは自然をモノで記録する目的でなされてきた。近年、これらを別の視点で利用する研究が展開してきた。例えばDNAや安定同位体、時空間分布といった情報の抽出とその活用である。つまり、体系的に収蔵登録された標本群は、研究者のマイニングによって新たな研究資源になる可能性がある。

生物学では、研究過程で動画を撮影することがある。とりわけ動物行動学や生態学では、以前から動画が一次データとして使われてきた。撮影機器の小型化、計算機速度の向上、ストレージの大容量化により、動画はデータを取る手段としてさらに普及し、その記録数は増大しつつある。生物学者は大量の動画を持っているはずである。

ここで注意すべきことは、動画には撮影した研究者自身が意識しない情報も多く含まれることである。別の研究者が違う視点で見れば、全く新しい研究成果につながることもあり得る。ということは、動画を体系的に収集・収蔵・公開するしくみがあれば、公共財としての研究資源になる可能性がある。つまり、生物学の動画は、博物館がコレクションする価値があると言える。

そこで、大阪市立自然史博物館では生物の動画を博物館の「標本」として収集、収蔵し、利用公開する試みを始めることにした。今回の発表では、このプロセスで想定される課題(著作権、作業負担、動画の保管方法、検索システムのあり方、公開方法など)をまとめ、検討してみたい。また、これらの課題を探るため、動画を研究に用いる研究者に対してアンケート調査を開始している。発表では、その途中経過も紹介する。


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