| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-324 (Poster presentation)
日中に採餌や繁殖活動を行なう生物にとって、活動を休止する夜間に、捕食者による攻撃や風雨を避けられる安全な睡眠場所の選定は、翌日までの生存確率を高める上で重要である。ミツバチのような社会性ハナバチでは、雌雄とも自らの巣に戻って越夜することが可能である。一方、単独性ハナバチでは、個々に越夜を行なう場合以外に、一箇所に集団を形成して越夜する行動が知られている。これまでの調査から、南西諸島に生息するミナミスジボソフトハナバチは、オスのみの越夜集団以外にも、メスのみ、もしくは雌雄混成の越夜集団を形成することが明らかになっている。この集団形成は日没前後に見られ、上から垂れ下がる状態の枯枝や細長い葉を越夜基質として利用し、飛来した個体はほぼ一列に連なるようにして集団を形成する。しかし、集団あたりの加入個体数や、集団に加入しようと飛来した個体同士の整列順序がどのように決まるのかはこれまで明らかになっていなかった。6月に西表島で行なった野外調査の結果、多くのメス越夜集団は、1つの基質あたり2個体から最大13個体によって形成されていた。メス個体の飛来した順序と基質上での越夜位置を調べた結果、最初に飛来した個体の越夜位置は、垂れ下がった基質の先端部付近であった。また、2番目以降の飛来個体が選んだ越夜位置は、最初に飛来した個体の越夜位置よりも上部に集中していた。越夜メスの多くは、卵巣内に成熟卵もしくは卵殻完成卵を保有しており、営巣活動を行なっているメスとの違いはみられなかった。これらの結果から、昼間の営巣活動を早く終わらせることが出来た個体ほど、越夜場所に戻ったときに、集団内で安全な越夜場所を確保できていると考えられた。