| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-378 (Poster presentation)
ラオスでは天水田稲作が行われており、コメ供給の不安定性を補完するため、水田に生息する生物を食用として利用している。近年、灌漑施設の整備が進められ、乾季作も可能な水田が増加している。乾季作の実施に伴う湛水サイクルの変化により、水田の生物相が影響を受け、それが人々の水田の生物資源の利用に影響を及ぼすことが予想される。本研究では、ラオス南部における乾季作の実施が、草本植物相および食用雑草の利用に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
ラオス南部チャンパサック県内の2つの村を調査対象地とした。どちらの村も村内に天水田と二期作田が存在する。各村において、住民に食用雑草についてのヒアリング調査を行った。また、各村において天水田と二期作田を合わせて20筆選定し、雨季と乾季にコドラート内の植物の種名と被度(%)を記録した。さらに、天水田と二期作田各10筆から表層5 cmまでの土壌を採取し、撒きだし実験を行った。
ヒアリング調査の結果、2つの村で9種の食用雑草が記録された。どちらの村においてもカオリシソクサ、デンジソウ属sp、コナギが多くの人に利用されていた。また、大部分の住民が、灌漑施設の整備前後で食用雑草の利用回数や利用する種類に変化はないと回答した。一方で、植生調査と撒きだし実験のデータのTWINSPANの結果、雨季の天水田と二期作田は異なるグループに分けられた。これらのことから、乾季作の実施は地上植生と散布体バンクの種組成に影響を及ぼしているものの、食用雑草の利用について現状では住民が認識するほどの影響はないと考えられた。