| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-379 (Poster presentation)
北海道中央部のトドマツ人工林において、保残伐施業が河川生態系へ与える影響を評価するため、渓床に貯留される有機物・土砂および底生動物を採集し、有機物貯留量・底生動物相との対応関係を伐採前後で比較検討した。流域面積5~10haのトドマツ人工林流域10カ所と天然生広葉樹林(リファレンス)3カ所の合計13流域を定点として設定した。2013年10月に伐採前調査を行った後、2015年5~8月に4流域で広葉樹の保残率を変えて伐採が実施され(皆伐・広葉樹少量保残・中量保残・大量保残)、同年10月に伐採後調査を実施した。調査は、伐採前後いずれも、メッシュサイズ8㎜の金網で作製した箱に礫径2~8cmの礫を予め入れて渓床に埋設し、1ヶ月後に取り出し試料処理を行った。トドマツ人工林流域では、伐採前、細粒有機物量(<1㎜)が顕著に多く、収集食、掘潜型の底生動物(フタスジモンカゲロウなど)が優占する傾向が明瞭に見られた。ほぼすべての地点で採集された分類群は、端脚目エゾヨコエビ、カクツツトビケラ属、ユスリカ科、カワゲラ科などであった。伐採当年の8月、調査地で比較的強い降雨(時間雨量20mm超)があり、調査定点のうち皆伐および少量保残流域で出水による大規模な河床攪乱があり、河床に厚く堆積、貯留されていた細粒有機物が洗い出された。結果として、伐採前と比べ、底質に占める細粒有機物量が激減し、これらに依存する底生動物が採集されなかった。伐採流域で河床攪乱の規模が大きくなった要因として、トドマツ樹冠による降雨遮断がなくなり、降雨時の直接流出量が増加したためと考えられた。また今年度は、中量保残、大量保残流域では顕著な変化は見られなかった。今後調査地ではトドマツを植栽し次世代の人工林を造成する予定だが、樹冠閉鎖するまでは同様な河床攪乱が頻繁に発生することが予想され、攪乱に対応した分類群の増加など群集構造の変化が予想される。