| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-383 (Poster presentation)
生活環にあわせて季節的に長距離移動を行う渡り鳥にとって、繁殖地、中継地、および越冬地のいずれの生息環境の悪化も個体群の存続確率の低下に繋がる可能生があるため、利用環境ごとの保全が強く求められる。福島潟は、毎年多くのオオヒシクイとコハクチョウが越冬場所として利用する県内最大の湿性環境であるが、最近10年ほどの間に、両種の採餌場所である潟周辺の水田地帯において商業地開発や大型圃場整備が進められ、急激な環境変化が起きている。このような環境変化は大型水禽類の越冬環境の劣化をもたらし、将来的に越冬数の減少に繋がることが予想されるため、早急に具体的な越冬地保全策の提示が必要となっている。本研究では、有効かつ具体的な越冬地保全策の立案に向け、はじめに、DNAバーコーディング法と安定同位体比分析により、越冬期におけるオオヒシクイとコハクチョウの食性を解明し、次に、それらの結果をもとに両種の採餌環境を適正に保つ農地管理策について提案することを目的とした。オオヒシクイの餌品目としてイネなど8種類の植物が検出され、越冬期間を通じてイネの利用率が高かった。一方、コハクチョウの餌品目としては9種類の植物が検出され、越冬初期においてはオオヒシクイ同様、イネの利用率が高かったものの、越冬中期から後期にかけて水田雑草の利用率が8割を占め、2種間での餌利用の違いが明らかとなった。2種の持続的な越冬地利用を支えるには、主要な餌であるイネの再生稈を越冬期に利用できるよう秋耕起を控えることに加え、水田雑草が生育できるよう畦への除草剤散布を極力控えるなどの対応が必要であろう。