| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-384 (Poster presentation)
ユーラシア大陸内陸の半乾燥地域では、過放牧により植生の荒廃が進んでいる地域が少なくない。荒廃した砂丘草原の植生回復手法として、様々な手法が提案されているが、中でも草方格による砂丘固定手法は、植生の回復を促す効果的な手法として既に多くの地域で適用されている。既往研究から、禁牧および草方格の設置により、土壌理化学性が回復し、次第に植被率や種多様性が回復していくことが報告されている。また、植生回復の過程において丘間低地が種のソースとなり、植生回復を促進している可能性も示唆されている。本研究では、内蒙古フルンボイルの砂丘草原を対象として、植生回復初期の動向に着目し、丘間低地からの植生回復の兆しが認められるかどうかを検証した。調査は、2015年夏季に草方格を用いた植生回復(在来多年生植物の播種)が行われている砂丘(2013年区、2014年区)2サイトを対象として実施した。各サイトで丘間低地、砂丘斜面、砂丘頂部、砂丘周辺(リファレンス)の3つの立地タイプを対象として、1×1mのコドラートを合計86地点配置し、コドラート内の出現種を記録した。また、2011年の衛星画像を加工し、植生回復試験以前の調査地点周辺の植被率を算出した。結果、再生1、2年後では、丘間低地により近い砂丘斜面と最も離れた砂丘頂部との間で種組成に明確な違いは確認されず、砂丘斜面や頂部の植物群集は、丘間低地に出現する種のごく一部から構成されていることが分かった。また、種組成のばらつき(NMDSによる地点スコア)を説明する要因として、半径25mおよび50m圏内の植被率が抽出され、植生回復初期の段階では、局所的な地形条件(斜面方位や傾斜など)と合わせて、植生回復試験以前の植生の残存状況が影響していると考えられた。