| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-387 (Poster presentation)
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の後、仙台湾南部海岸に沿った幅およそ1.5kmの砂浜海岸エコトーン(平吹ほか、2011)では、立地と植生が著しく変動し続けている(環境省自然環境局生物多様性センター、2016)。私たちは、2011年6月、仙台市宮城野区岡田新浜地区の砂浜海岸に調査区を設定して(38°14'N、141°00'E; 汀線に沿って約550m、奥行き約700m)、植物相・植生調査や保全・保護活動を継続してきた(南蒲生/砂浜海岸エコトーンモニタリングネットワーク、2016)。本報告では、(1)砂浜・砂丘・後背湿地といった成帯構造と(2)それぞれの領域内における微少な地形・土質の差異、およびその成立にかかわる自然・人為攪乱の2点に着目しながら、多様なミクロサイト間で高木・亜高木性樹種の更新集団を比較した結果を報告する。
主たる毎木調査は2015年8・9月に、実生・萌芽・前生稚樹(最大樹高5.5m)を対象として、123方形区(2.5m×2.5m~10m×10m)で実施した。大地震・大津波と復旧・復興工事によって立地と植生は著しく改変されたが、砂丘頂に再建された防潮堤より内陸側では、クロマツやハリエンジュが多数再生し、さらに後背湿地領域ではサクラ属やアカマツ、コナラ、ヤナギ属の幼個体も散生していた。(1)砂浜海岸エコトーン内に織り込まれていた生態系の冗長さ、(2)自然攪乱の不均一なふるまい、(3)大規模工事に伴う非盛土や踏圧低減といった保全配慮、(4)地下器官と残存木由来の種子が、自律的再生を支えていると推察された。