| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-392 (Poster presentation)

優占種の導入時期と導入方法が種多様性に配慮したチガヤ草地の成立植生を大きく変える

*山田晋(東大・農), 根本正之(東大・農/明大・農)

草地の植生復元手法の一つに播種による方法があるが,国内で具体の研究事例は少ない。本研究では,導入種を優占種とその他(ターゲット種)に分け,優占種(チガヤ)の導入手法と導入種の導入時期が植生に及ぼす影響を圃場試験により追跡して3年目である。試験方法については本学会2014年の講演要旨を参照されたい。3年目における試験区のチガヤのバイオマスはマット区>苗区>播種区となった。導入しなかった種(雑草)のバイオマスは3月区では試験1年目から大きかったが,7月区の雑草バイオマスはチガヤ導入区では小さかった。ターゲット種8種のうちノアザミ,ツルボ,メドハギ,ワレモコウ,ユウガギクは,ユウガギクの7月区を除き,いずれの導入時期でも1年目に高い発芽率となった。ツリガネニンジンの発芽率は2年目春季に極大化したが,強い被陰を受け,発芽個体は3年目までにほぼ枯死した。マット区では,マット上が乾燥したためターゲット種の発芽率は低かった。ターゲット種の残存率は全般に3月区で低かった。3月植栽ではチガヤ導入手法によらず雑草バイオマスがチガヤのそれを上回り,関東地域のチガヤ草地創出には3月は不適な植栽時期と考えられた。5月,7月のマット植栽によってチガヤが寡占する群落が形成されたが,ターゲット種の発芽率が低さゆえ,発芽率を改善させない限り多種からなるチガヤ草地の創出はマット植栽では難しい。5月または7月の播種あるいは苗植栽によってチガヤ・雑草・ターゲット種の混生群落が形成された。チガヤバイオマスは3年間増加し続けており,これら試験区はチガヤ優占草地へ変化する可能性がある。当該区ではチガヤバイオマスの増加に伴って一部のターゲット種の残存率が低下しており,これらの残存状況を今後注視する。


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