| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-394 (Poster presentation)

石狩低地帯南部小河川における沈水性水生植物群落の復元

*櫻井 善文(札幌市立大院),矢部 和夫(札幌市立大)

北海道石狩低地帯南部の湿原河川である美々川は、流路延長14.7kmの二級河川である。美々川は上流部7.0~8.5km付近までの区間において1991~1996に水路内でクサヨシが急速に繁茂し、水路内に生育していたバイカモ、エゾミクリ等沈水性の水生植物群落が減少した。河道の水生植物群落の再生には水質改善と周辺地域の開発等により減少した流量の増加が望ましいが、これらには多大な時間と費用が必要となる。そこで、現状の流量・水質で沈水性水生植物群落を再生するため、湿原内を流下する流路内の流速を操作し、クサヨシによる閉塞を防ぎ、底質を変化させ、バイカモ、エゾミクリ等の水生植物群落を再生する方法を試みた。本川は、大部分が地下水により涵養されており流量も通年安定している。開削実施前に区間内の42か所で、流路幅と流心流速及び水生植物の被度を測定した、この結果、流速0.25m/s~0.35m/s、流路幅3~4mの範囲が最も水生植物が良好に生育する条件であることがわかった。本結果から閉塞区間のすべてのクサヨシを除去するのではなく、3~4mの水路幅に開削した。開削の前後で10箇所の試験区と10箇所のリファレンスサイトで水路幅×1mの0.5m刻みの連鎖方形区調査を実施した。調査では、確認種と被度、水深、河床材料、泥の厚さ及び流速を計測した。開削後3年間の追跡調査の結果、水路幅は10箇所の平均で3.3mに維持され、クサヨシによる再度の閉塞はなかった。また、10箇所の開削後の流心流速は、2.6m/s~4.0m/s内外になり、底質は泥から砂または砂利に変化した。沈水性水生植物群落は開削前で水路内の被度2%程度であったが、3年後では20%以上に増加した。特にバイカモ群落が3年間で10%以上になり、流速を増加させたことにより沈水性水生植物群落が再生・維持されていることが確認された。


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