| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-395 (Poster presentation)
人間によって利用された土地では植生や土壌の質が改変され、様々な分類群の生物多様性に影響をもたらす。利用強度・周辺環境によっては、人為影響からの生態系の回復が困難となる場合があるため、回復措置が求められる。本研究では、過去に採草地として利用されたのち、放棄されて成立した天然生林において土地利用履歴が生物多様性に負の影響をもたらしているかを明らかにし、負影響があるとすれば、影響を受ける分類群から、想定されるプロセスを推定することを目的とした。
過去採草地として利用されていた6地点、同時期に若い落葉広葉樹林であった8地点の20-36年生二次林で調査を実施し、履歴の異なる森林間の比較から、採草地利用したことの影響を検討した。これらの調査地において2015年に生産者 (木本)・分解者 (硬質菌子実体) の調査および、マレーズトラップと衝突板トラップを用いた低次消費者 (ハムシ・セミ・社会性ハナバチ・タテハチョウ・カミキリムシ)・捕食者 (社会性カリバチ) の採集を行った。結果をもとに、種数および群集非類似度を指標として、過去の履歴が現在の生物相に及ぼす影響について検討した。
過去も二次林であった場合と比較して、過去採草地として利用されていた二次林は、記録された木本種数が少なかった。また、衝突板で採集されたハムシ・セミの群集非類似度は、木本の群集非類似度と正の関係にあった。各分類群の群集に対する調査地点間の距離の影響は限定的であった。これらの結果から、過去の採草地としての利用は現在の木本植物の更新、特に種組成に影響を及ぼし、更にその効果が、生きた植物体を摂食し、専食性の高い種を含む低次消費者の群集構造に及んだものと考えられた。