| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-402 (Poster presentation)
滋賀県と岐阜県にまたがる伊吹山(1377m)にあり天然記念物に指定されている「伊吹山頂草原植物群落」では、低木や草を刈るなどの植生遷移対策が行われてきた。2010年頃からはニホンジカの増加の影響が目立つようになり、伊吹山自然再生協議会、滋賀県、米原市や保全団体などが、植生防護柵の設置、シカ個体数管理などの対策を行っている。
2012年には、ほとんど全個体が摂食を受けたニッコウキスゲの群落を囲む10m四方ほどのAT柵が6箇所設置された。その後、柵内の個体は保護され開花数も回復した。しかし強風により柵が壊れたり、春の雪解けが早くネットを上げるのが遅れた場合に摂食され、柵メンテナンスの体制に課題を残した。
2014年には非常に多くの種が摂食を受け、シモツケソウやオオバギボウシなどの目立つ花が減り、シカが好まないアカソ、フジテンニンソウ、オオヒナノウスツボなどが増加したことから観光面でも問題になった。それらの群落の実態を知るために植生調査を行った。アカソ優占区では被度の88%をアカソが占めていたが、その他に78種が出現し、その中には希少種・重要種が30種含まれていた。フジテンニンソウ区では被度の77%をフジテンニンソウが占めていたが、他に83種が出現し、希少種・重要種が38種含まれていた。2015年9月には、これらの群落を囲む延長1kmのAT柵が山頂西側に設置された。11月には、柵外では摂食圧が相変わらず高かったが柵内の摂食はなくなった。
シカやイノシシの掘り起こしによる裸地も増えている。掘り起こし跡に区画を設置し植生調査を行った。オランダミミナグサやヤマガラシが多く、合計44種が生えてきていた。外来種が被度の約20%を占めていた。