| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-403 (Poster presentation)

放置里山林における森林再生を考慮した資源利用の検討

北川皓平,堀田佳那,木原健雄,新良貴歩美,石井弘明,*黒田慶子(神戸大・農)

里山は、人間が薪炭などの資源を利用することで、森林生態系としては遷移初期の陽樹林の状態で維持されてきた。しかし近年、管理放棄された里山では、伝染病であるブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)の拡大など様々な問題が起こることが確認されている。放置里山林を森林生態系として安定した状態で維持するためには、伐採および資源の利用と再生を組み込んだ管理の再開が必要であると考えられる。本研究では、放置里山林の資源量の推移を把握することにより、伐採後の森林再生を確実にする管理方法の提案を目的とする。調査区は、兵庫県篠山市の放置里山林に設定し、毎木調査(胸高直径・樹高測定)及び年輪のデータから、木質資源量及び成長量を求めた。

大径木はコナラ・アベマキなどの落葉高木種が多かった。小径木は落葉低木種やソヨゴ・ヒサカキなどの常緑中低木種が多く、落葉高木種の幼樹や実生は確認されなかった。この林分は落葉高木種が優占する森林から、常緑中低木種が優占する森林へと遷移していることがわかった。森林総合研究所「幹材積プログラム」を用いて算出した資源量から、落葉高木種が資源量に大きく寄与することがわかった。

ナラ枯れは大径木ほど感染しやすく、今後この林分の資源量は大きく減少すると考えられる。そのため、若齢林として維持していくことが望ましい。年輪解析より、多くの個体は資源利用される太さになるのに15~30年の時間を要することがわかった。この期間内で管理を行うことで、資源を確保しつつ若齢林を維持できると考えられる。しかし、立地条件により成長速度に差が生じる傾向が見られたことから、資源利用を伴う管理の再開においては、成長速度に応じて利用する必要がある。


日本生態学会