| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-407 (Poster presentation)
ササ型林床をもつ温帯林では、上木の伐採後にササが繁茂することが主要因で更新が失敗するケースが多く報告されている。ましてや、林冠下でもササが存在する場合には自然に樹木の更新が成功する見込みは少ない。更新にとってササの抑制は必要不可欠であるが、ヒノキの林冠下でササを抑制した場合に更新が進むかどうかについては知見が少ない。この場合にどのような抑制方法が有効なのか?ササが抑制されれば、天然更新の初期段階は成功するのか?について解明するため操作実験を行って検討することにした。
実験は、木曽地方の300年生前後と考えられる天然生ヒノキ林の林床で行った。ササの抑制方法には、一般に刈払いと薬剤散布による方法がある。抑制方法の違いが、ササの群落構造やその後の回復に与える影響、またはヒノキ実生の発生や生残の仕方に与える影響を明らかにするため、刈払いと薬剤による処理、これらを組み合わせた処理を行った。薬剤はササの新稈の伸長成長を抑制するフレノックを用いた。フレノックはササを枯殺せず、徐々に効果が現れ、何年かの後には回復する。実験は2012年に開始し、刈払いのみの処理は連年で行い、刈払う時期の違いも組み込んだ。
2015年は処理後3年が経過したが、刈払いを含む3処理は最初に刈り払った効果が大きく、毎年の発稈数は殆どなかった。現在でも刈払い状態が維持され、地下部の衰退も進んでいる。また、フレノックのみの処理は3年目にしてようやく刈払い地に近い地上部現存量になったが、既に当年稈の発生数が増加し、回復し始めている。したがって、伐採前の天然更新にとって有効となるササの抑制方法は、刈払いであるという見込みがでてきた。