| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-409 (Poster presentation)

湿原におけるシカの季節移動と日周行動を解明し効果的な管理を目指す

*吉田剛司, 日野貴文, 吉田遼人, 上井達矢, 五十嵐守, 佐藤温貴 (酪農学園大), 村井拓也, 立木靖之, 赤松里香(EnVision), 小林聡 (釧路公立大), 島村崇志, 長雄一, 稲富佳洋, 上野真由美, 宇野裕之(道総研環境研)

北海道東部に位置する釧路湿原では,高密度化したシカにより湿原植生への影響が報告されシカ管理が急務となっているが,湿原生態系におけるシカの生態は不明な点が多く,シカ管理の基礎情報が不足している.本研究では,湿原生態系におけるシカの季節移動と日周行動を解明するため, 釧路湿原中南部を横断する右岸堤防道路周辺(以下,右岸堤防,2014年秋)と釧路湿原北部を横断するコッタロ道道1060号線周辺(以下,コッタロ,2015年2-3月)にて,10頭ずつ計20個体のシカにGPS首輪(測位間隔3時間)を装着し行動追跡を行った.

その結果,追跡個体による湿原の利用パターンは3つあり,1)通年で湿原内に定住、あるいは湿原内で季節移動する個体(n=16),2)夏季は湿原で生息し冬季に湿原外に季節移動する個体(n=3),3)冬季に湿原で生息し夏季に湿原外へ季節移動する個体(n=1)に分かれた.生息地選択性を解析した結果,湿原中南部と北部で選択性に違いがあり,季節によっても異なっていた.右岸堤防道路の個体は,夏季の日中は湿原内を利用し,夜間は牧草が吹き付けられている右岸堤防道路の法面を選好していた.一方で,冬季は主に湿性林を選好していた.コッタロの個体は,夏季の日周変化は見られず,一日中,開放水域,低層湿原,湿性林を選好的に利用していた.冬季は昼夜ともに湿性林にて生息することが多かった.

これらの結果から,釧路湿原で効率的にシカ管理を実施するには,右岸堤防では夏季の夜に堤防法面で捕獲し,コッタロでは誘引が容易な冬季の昼に捕獲するのが効率的だと推測される.


日本生態学会