| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-473 (Poster presentation)

市民活動による里山の植物種多様性モニタリング~7年間から得た教訓

*伊藤浩二(金沢大・里山里海プロジェクト),萩野由紀(まるやま組),中村浩二(金沢大・里山里海プロジェクト)

筆者らはこれまでに、市民・コミュニティの教育効果や、課題解決に軸足を置いた市民科学の在り方である「参加型アクションリサーチモデル」をベースにして、市民の「里山から得られる有形無形の恵み(生態系サービス)を引きだす力」を高めることにつながる生物モニタリングシステムづくりを行ってきた。そこで、環境省モニタリングサイト1000里地調査の一般サイト「トキのふるさと能登まるやま」で実施された植物相モニタリングの実践事例(2009年~2015年)を元に、得られた科学的成果の検証(データ信頼性、種多様性保全や順応的管理に十分なデータ取得ができたか)と、モニタリング活動から波及した地域コニュニティ活性化に対する効果と諸課題を整理した。

7年間のモニタリング調査の結果から、①毎年継続的に確認できる植物、②断続的に出現の有無が繰り返される種、③調査期間途中で出現が始まるもしくは途絶える種の3つの出現パターンが見出された。③のうち、長年継続して確認されたものが急に確認できなくなった場合は、局所絶滅のリスクが高い種と評価して、それらの種の特性について議論した。

モニタリング成果の波及効果として、①季節ごとの植物相のデータベース蓄積により、地域フロラの参照資料ができ、種同定可能な専門家が必ずしもいなくても一般参加者向けに植物観察会を実施することができるようになった。②地域の植物の花ごよみを時間軸にして、地域の農業や暮らしとのつながりが見えるようにした里山暦「まるやま本草」を作成し、地域内外の大人・子ども向けの学習資料としたほか、集落各戸に配布することで地域のくらしそのものがもつ新たな価値に気づくきっかけを提供することができた。


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