| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-474 (Poster presentation)

奄美大島の小学校校庭に生育する維管束植物の多様性

川西基博(鹿児島大・教育)

校庭に生育する植物は、児童・生徒にとって最も身近な植物であり、環境教育、理科教育において重要である。校庭に生育する野生植物は意外と多く、それを教材として利用できれば教育的効果は高いと考えられる。奄美群島は亜熱帯性の植生が成立する地域で本土の植物相とは異なり、固有種や分布の北限,南限種が多いことなどから重要視されてきた。校庭に生育する植物についても島嶼特有のものになることが予想される。そこで、本研究では、奄美大島と加計呂麻島において、小中学校の校庭に生育する維管束植物の植物相を明らかにし、その多様性を評価した。調査は2015年8月と9月に行った。校庭をくまなく踏査し、運動場、植え込み、花壇、プランターなど植物の生育地となりうる立地全てを対象として生育する維管束植物を記録した。植物の生育状況は自生と植栽に区別した。11の小中学校において調査を行ったところ、約600種の維管束植物を確認された。各校における総出現種数の平均は139.5±11.0種で、そのうち自生は平均76.0±9.7種、植栽は平均66.4±12.2種であった。自生のアキノノゲシ、オオバコ、オニタビラコ、コミカンソウといった畑地や路傍雑草類や、植栽のソテツ、ガジュマル、ビロウ、ブッソウゲなどは11の学校のほとんどで生育が確認された。一方、アダン、アカテツといった海岸林構成種が見られる学校や、希少種のマツバランが生育している学校、アマミヒイラギモチなど奄美の固有種を植栽している学校など、各校の特異性もみられた。植物相の類似性をクラスター分析で評価したところ、加計呂麻島に位置する学校は相互に類似性が高く、奄美大島の学校の植物相とは異なる傾向があった。また、奄美大島の学校では名瀬に位置する学校とそれ以外の学校で異なる傾向が認められた。


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