| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-475 (Poster presentation)
地域の生物多様性を保全するためには、まず地域の生物情報と生物が生育する自然環境の現状を把握しなければならない。しかし、地域レベルでの生物相の解明が不十分であったり、情報があっても集約されておらずそのままでは活用できない場合が多い。このような状況では、地域の生物多様性保全に関して有効な対策を考えるどころか、生物相の変化を捉えること自体が難しくなる。今後予測される自然環境の変化に有効な対策を講じるためには、この現状を地域レベルで改善しなければならない。弘前大学白神自然環境研究所では、白神山地を中心とした青森県の生物情報の収集、管理、発信を重要な業務と位置づけ、様々な活動を行ってきた。これまでの活動には地域の組織や市民の協力が不可欠であり、特に地域の生物情報に詳しい市民研究家の方々の協力は非常に重要だった。当研究所では、市民研究家の活動を地域の生物多様性保全対策や自然史研究に十分に利活用できるような持続的な仕組み(生物情報ネットワーク)作りを行っている。現在、市民を対象にした研究協力員制度を整備し、地域の生物情報の収集を市民研究者と協働で行ったり、利用しやすいデータベースを共に制作しweb上で一般公開するなど活動の幅を広げている。一方で大学組織としてこれらの活動を持続的に行うことや他機関との連携などに関して様々な課題もみえてきた。特に大学生を中心とした次世代を担う人材の育成は、このような活動を続ける上で解決すべき大きな問題である。この問題はすぐに解決できるものではないが、まずは若い世代に地域の自然に関心を持ってもらい、活動に様々な形で参加してもらえるように様々な試みを行っている。