| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-477 (Poster presentation)
苫小牧市は、北海道の南西部太平洋沿岸に位置し、南側には海岸、北側は落葉広葉~針広混交樹林帯、東側には湿原が広がっている。同調査は村上が在来種のタンポポ(後にシコタンタンポポと同定)の群落を2009年に目撃したことをきかっけに、在来種のタンポポに関する情報が集まり始めたことから、(1)身近な植物を教材とした教育普及的活動の展開 (2)市内の広範囲にわたり、タンポポの生育状況や外来種との関係を把握するための継続的な観察の実施の2点を目的に同市美術博物館と同博物館友の会の共同で、市民参加型調査として2014年に実施した。在来種のタンポポは開花期が4月下旬~6月上旬に限られている上、花期以外での在来種と外来種の識別は難しく、また北海道のタンポポの明確な分類系統が定まっていない、などの課題があったが、本調査は「在来種と外来種の分布状況」を一斉に調べることを目的としたため、総苞外片の形や花の形態など「みなし」の分類方法を導入した。また調査地には高山性のタンポポが生育する可能性が低いと判断し、在来種の分類を平地に生育する「シコタンタンポポ」「エゾタンポポ」の2種に絞った。
その結果、シコタンタンポポは護岸された海岸や内陸、河川敷などに分布し、生育地点の外来種との割合に特に相関はなかった。一方、エゾタンポポは公園などの緑地帯や落葉広葉樹林帯の林縁部に分布していたが、外来種との割合について「同一地点での在来種の割合が0-10%または100%に収束した種」と「特に相関の無い種」に分かれた。後者は、開花時期によって総苞外片の向きが変わるなど、外部形態が異なる種が多く含まれていたことから、在来種で無い個体が混在していた可能性がある。今後「みなし」の調査方法も見直しながら、継続して定期的に一斉調査を行っていく。