| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T08-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

ブルーカーボン(沿岸生態系)による緩和策と適応策

桑江朝比呂(港湾研),井上智美(国環研)

海洋生物によって生態系内に隔離された炭素のことを,2009年に国連環境計画(UNEP)は「ブルーカーボン」と名付けた.陸域や海洋は,地球における炭素の主要な貯留場所となっているが,陸域と比較して海洋が炭素貯留場所として重要なのは,海洋堆積物中に埋没したブルーカーボンが長期間(数千年程度)分解無機化されずに貯留される点である.海洋のなかでも,海草場,塩生湿地,マングローブ,干潟といった砂泥性の河口浅海域が主たる炭素の埋没場所となっていることから(全球の海底堆積物へ埋没し貯留される炭素のうちの約79%(1.9億トンC/年)),河口浅海域の保全や再生は気候変動の緩和に有効であると考えられている.

河口浅海域のブルーカーボンは,気候変動気候変動への適応(減災)にも寄与する.これは,マングローブ林やサンゴ礁,あるいは海草藻場が波浪を減衰させることによって,陸域への浸水や海岸侵食を抑制するためである.近年では,このような生態系ベースの海岸防御が注目されている.

本講演では,環境省環境研究総合推進費「気候変動の緩和策と適応策の統合的戦略研究(S-14)において現在進行中の,ブルーカーボンによる気候変動の緩和・適応効果の定量化と経済評価に関する研究の概要について報告する.


日本生態学会