| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T10-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
東京電力福島第一原子力発電所事故による山岳湖沼の放射性セシウム汚染の長期化問題を解決するために、福島県金山町沼沢湖(沼沢沼)で水理・水質を考慮した生物及び陸水学的調査研究を行った。阿賀野川の支流、只見川の右岸より約1kmの距離にある沼沢湖は約5000年頃に火砕流噴火を起こした小型のカルデラ湖である。湖の水面高度474 m、湖岸線7.5 km、面積2.98 km2、最大深度96.0 m、平均深度は60.4 m で湖岸は非常に急深である。湖と只見川の二つ落差を利用して昭和27年より揚水発電が行なわれていた。災害で2011年から停止していたが2014年から再開している。揚水発電の効果について、水質・水文調査と循環のシミュレーションを行った。降水量だけでは約26年で交換するが、揚水発電だけで約4年で交換すると計算された。2014年から急激にヒメマスのセシウムの放射能が低下した原因は揚水発電による効果と推定された。2014年には年間500g/m2の沈殿物があり、それから最近の堆積速度は3.3mm/yと推定された。沼沢湖の湖心と沿岸で底質コアから放射性セシウムのインベントリー(4.3万Bq/m2)を明らかにした。底泥表層から約20cmに火山灰層と137Csのみが見出され134Csは無いことから、1963年頃の核実験時期のフォールアウト(当時で約3.4万Bq/m2)のピークと確認された。火山灰は6世紀(1500年前)の榛名テフラと推定され、1500年間の平均堆積速度は約0.14(mm/y)となった。一般には移動しないとされる放射性セシウム137Csはここではセシウムが溶存態として移動する(1.2mm/y)と推定され、沼沢湖では地下水と共に137Csが極わずかの速度で下方に移動していることが初めて確認された。