| 要旨トップ | ESJ63 企画集会 一覧 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T10 -- 3月22日 9:30-11:30 RoomC
2011年の福島第一原子力発電所事故により、大気中に多量の放射性物質(放射性セシウム)が放出され、今なお森林をはじめとする自然生態系に蓄積している。放射性セシウムは土壌鉱物に強固に吸着する性質を持っており、一度吸着したセシウムはほとんど脱着しない。そのため、事故後、環境中に放出された放射性セシウムは徐々に土壌に固定され、事故後5年経た現在、森林・草地・農地・湖沼等、各生態系に存在する放射性セシウムが、他の生態系へ移動することはまれであると考えられている。
しかしながら、近年の研究によって、植物体や地下水から、微量ではあるものの、放射性セシウムが検出される等、大部分の放射性セシウムは土壌に強固に固定されているが、一部の放射性セシウムは土壌鉱物に固定されず、現在も環境中を移動していることを示す事例も報告され始めている。この移動性の高い放射性セシウムは、放射線防護の観点から非常に重要な存在形態であり、その動態は早急に解明しなければならない課題である。
本企画集会では、森林土壌、湖底堆積物、植物体内、地下水で観察される移動性の高い放射性セシウムの動態について、各専門分野の研究者に話題提供をお願いし、環境中に存在する放射性物質の動態解明に関する今後の課題などについて議論する予定である。
コメンテーター:奥田敏統(広島大 総科)
[T10-1] 森林林床における溶存態放射性セシウムの移動
[T10-2] 樹木における放射性セシウムの経皮吸収の影響と経年変化
[T10-3] 山岳湖沼における放射性セシウムの循環
[T10-4] 地下水から検出される福島事故由来の放射性セシウム