| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T20-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
イトウ(Parahucho perryi)は日本に生息する最大の淡水魚である。本種はかつて北海道のほかに青森県、岩手県にも分布が確認されていたが(Fukushima et al., 2011)、現在その分布域は北海道の道東・道北地区の一部の水系のみに縮小し、個体数も大幅に減少している。このことからIUCNのレッドリストではCRに位置付けられているが、現在の分布域および生物量などの生物学的に基礎的かつ重要な情報は未だ不明瞭である。
環境DNAとは環境水中に生息する生物に由来するDNAを指す。本技術は標的生物の在・不在を判定することに長けており、外来種や希少種の分布域の探索、魚類相の調査などに利用され始めている。加えて環境DNA の濃度は生物量に比例して高くなると考えることができるため、標的生物の生物量を検出する可能性も示唆されている(Sigsgaard et al. 2015)。しかし、環境DNAサンプルを採集した際の生物量をその場で評価することは極めて困難であり、自然河川における生物量の定量的な評価には今一歩及んでいない。
本発表では昨年猿払川水系にて行われた調査について報告する。猿払川水系は数少ないイトウの分布域のなかでも比較的多くのイトウ親魚の遡上が確認されており、2013年から音響ビデオカメラを用いたイトウの遡上親魚数の推定が継続して行われている(Rand and Fukushima. 2014)。今回はその音響ビデオカメラの解析によって得られた2015年4月15日~5月14日までのイトウ親魚の遡上数の経日変化と、同時に採集した環境DNAサンプルに含まれるイトウのDNA量を比較することで、自然河川における環境DNA技術を用いたイトウDNAの検出およびその定量性について議論する。