| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T21-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
深刻化する熱帯域での森林減少・劣化を抑止するための温室効果ガス削減活動として2020年から開始予定のREDD+(森林減少・劣化由来の温室効果ガス削減活動)が注目を集めているが、その実施に当たっては、生物多様性や先住民の権利への配慮が必要とされ、これらがセーフガードの重要項目として盛り込まれている(COP16カンクン合意)。
世界の遺存的生態系となった熱帯林とその生物多様性を保全するには、森林保護区や国立公園の指定などによって拘束性の強い土地利用政策打ち出すことも重要であるが、生物資源をより良く利用することで、循環型農林業を促し、ひいては、それが森林減少や劣化の予防・抑止に繋がるという考え方もある。貧困とそれに伴う自然資源収奪が常態化している地域では森林保護区の境界がどれ程長期的に保証されるか分からない。こうした点でREDD+とセーフガードは森林資源の持続的利用と生物多様性保全の両立のための仕組み作りを進めるうえでまたとない機会ともいえる。すなわち、熱帯林の特徴である高い生物多様性と炭素貯留機能を共に生かしながら、同時に地域社会の便益を担保するためにはどのような保全と利用方法があるか-生態学がこれまで向き合ってきた中では、難易度の高い課題ではあるが、REDDのメカニズムを使いながら実現性の高い方法論が議論できる貴重な「場」であるとも言える。
本シンポジウムではラオス、ミャンマー、ベルーやカンボジアなどの農山村社会を含む生態系で、住民便益と生物多様性のバランスに焦点を当てた研究や保全活動事例を紹介し、持続的自然資源利用と森林劣化・減少抑止活動がどの程度有効に機能するか、またそのためにはどのような「基準・指標」が必要かについて議論する.