| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T21-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
地元住民による森林破壊を抑制するための実践的な手法である保全契約とその適用事例と紹介する。
保全契約は、コンサベーション・インターナショナル(CI)が過去10年間に亘って世界各国で適用し、改善を重ねてきた、地元コミュニティによる持続的な自然資源管理の実現を目指す手法である。現在では他NGOにも活用されている。保全契約では、事前調査に基づき、保全活動、コミュニティが受取る便益、モニタリング項目や罰則を議論の上で決定し、コミュニティと契約を締結する。定期的に(多くの場合で毎年)契約内容を共に見直すことで、状況変化や経験に基づく修正を加え、持続可能な管理・資金体制に向けて徐々にコミュニティの自立を図る。
ペルーのアルトマヨ保護林の森林減少の主要因は、地元住民による小規模コーヒー農園の拡大である。技術や資金が乏しい状況で、粗野なコーヒー栽培で土壌が劣化し、収量が減少し、生活のために新たな農園が開拓される、ということが繰返されてきた。2007年に開始した政府をはじめとした関係者との連携による保護林管理の重要な活動の一つが保全契約である。地元住民と政府と共に森林保全に取組む一方、地元住民コーヒー栽培に関する支援などの便益を提供している。このプロジェクトは、排出量取引の国際的スタンダードの認証を受けたREDD+プロジェクトであり、排出量オフセットを目的とした民間からの資金支援を受け、活動の資金を得ている。森林面積調査、生物多様性調査、社会経済調査を通じたプロジェクト全体の評価に加え、保全契約実施状況をモニタリングすることで、森林保全効果の向上を目指してきた。カンボジアの事例は、REDD+ではないが、同じくコミュニティ参加型の保全契約を適用した森林保全の取組である。両事例を通じて、コミュニティ参加型の森林保全がどのように森林減少・劣化抑止に貢献しているか紹介する。