| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T21-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

生物多様性の住民利用の可能性

山田俊弘

東南アジア諸国の中で2番目に広い森林面積を持つミャンマーでは、森林面積が急速に減少しつつある。ミャンマー、バゴー地区にある調査を行った森林は保護林指定を受けており、森林面積の減少は他の地域より穏やかである一方、地域住民は林産物を利用すること無しには生活が成り立たないため、伐採を含めた保護林内の林産物の利用が目立ち、これによる森林減少・劣化が懸念されるところである。森林保護と住民便益を両立させながら森林を管理していくかが、この地域の喫緊の課題である。この課題に応えるため、異なる管理下にある6つの森林タイプ(管理プランテーション、放置プランテーション、タケ優占林、監視のある自然林、監視のない自然林、アクセスの悪い自然林)において、地上部バイオマス、生物多様性、住民便益の程度を定量した。調査はそれぞれの森林タイプに数個の調査プロットを設置することで行った。森林官が定期的に下草刈りを行うなど管理が行き届いている管理プランテーションは、地上部バイオマスが高いものの生物多様性が著しく低かった。監視のある自然林は無い自然林よりも劣化しておらず、住民への魅力も高かった。タケ優占林はバイオマスが自然林の十分の1程度しかなく、竹林の拡大は森林炭素の貯留には負の影響が大きいことが分かった。このように森林管理の違いにより出現する森林の性質が大きく異なり、それぞれの森林タイプが長所と短所を持つことが分かった。森林タイプの多様性とモザイク性を維持し、その最適な面積バランスを保つことが当地域の森林管理の最適化につながることが示唆された。

本研究はミャンマー森林研究所イーイー博士、広島大学大学院総合科学研究科奥田敏統博士、三浦麻由子さん、堀金司さん、上田健太さん、天野正博博士をはじめとする早稲田大学の研究グループと共同で行いました。


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