| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-04  (Oral presentation)

大陸からの侵入淡水魚による置き換りの推定: 分子系統地理的前向きシミュレーションによるアプローチ

*谷口昇志(東京大・農), 指田昌樹(東京大・農), 岡崎登志夫(東京大・農), 田祥麟(祥明大學), Johanna Bertl(Department of Molecular Medicine, Aarhus University), Andreas Futschik(Department of Applied Statistics, Johannes Kepler University Linz), 岸野洋久(東京大・農)

演者らは、「日本列島における淡水魚の分布形成過程において、大陸からの侵入個体群が在来個体群を置き換えた」との仮説を立てている。今回、淡水魚の分布形成過程を再現する分子系統地理的前向きシミュレーションを開発し、移動と置き換わりという2種類のパラメータを組み合わせることで分布形成に関する様々なシナリオを再現できるようになった。本発表では、このシミュレーションを用いて上記仮説を統計的仮説検定の形に定式化し、最尤法の枠組みで妥当性を検証する手法を紹介する。

上記2種類のパラメータに関する感度の高い統計量を設定し、シミュレーション値と実現値のかい離の大きさを測定した。本研究では侵入個体群の空間的自己相関と遺伝子流動の制限に着目し、遺伝距離に地理距離のペナルティを与えた指標と、Templetonらによるclade distance, nested clade distanceを統計量として採用した。

上記要約統計量の尤度関数を明示的に書き下すことはできない。このため、まずシミュレーション値の分布をカーネル密度推定した。そして、実現値における密度として尤度を求め、確率傾斜法を用いて最尤推定を行った。さらに、尤度比検定により置き換わりの有無を検定した。

以上の枠組みの下、カワムツという淡水魚を中心にシミュレーションを実施した。今後、同様の解析を様々な魚種について行う予定である。


日本生態学会