| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) M01-05  (Oral presentation)

長期の土壌温暖化実験がミズナラの上の植物の昆虫の相互作用に与える影響

*中村誠宏, 中路達郎, 日浦勉(北海道大学)

 過去の温暖化実験は小面積で短期間しか行っていないため、植物と昆虫の相互作用への影響はボトムアップの効果だけに注目したものが多い。しかし、実際の温暖化影響を理解するためには、大面積で長期間の温暖化実験を行って、ボトムアップとトップダウンの両方の効果を考慮しなければならない。
 本研究では長期の土壌温暖化が高木林冠の植物と昆虫の相互作用にどの様な影響を与えるのか?を解明するために、北海道大学の苫小牧研究林においてミズナラ高木(高さ=約20m)の地下部を温暖化する操作実験を行った。5m x 5mのプロットを作り、土壌に電気ケーブルを埋めて周りに比べて5℃上昇させる処理を2007年から2015年までの9年間に渡って行った。このサイトには林冠クレーンが建設されており、ミズナラ高木の林冠に直接アクセスすることができる。
 土壌温暖化の被食度への影響は時間と伴に変化した。はじめの3年間(初期)は被食度を低下させる温暖化影響が徐々に増加した。次の3年間(中期)にはその増加は止まったが、大きな温暖化影響は維持されたままだった。最後の3年間(後期)は温暖化は小さな影響で維持された。一方、土壌温暖化の葉形質への影響も時間と伴に変化し、葉形質毎に異なる応答を示した。初期には温暖化はCN比を増加させ、窒素含量を低下させた。中期にはCN比とフェノール含量を増加させた。そして、後期にはフェノール含量だけに影響を与えた。
 これら結果から、期間毎に被食度への温暖化影響に貢献する葉形質が異なると考えられた。しかし、葉形質(ボトムアップ)だけではこの温暖化影響の時間的変化を完全に理解することはできない。長期の土壌温暖化は高木に生息する昆虫の密度・種組成を徐々に変化させて、被食圧(トップダウン)を変えてしまう可能性がある。本発表ではこのトップダウン効果も考慮して温暖化影響を議論したい。


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