| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-B-031 (Poster presentation)
アマミノクロウサギは奄美大島・徳之島にのみ生息する固有種である。外来捕食種のマングースにより、1990年代中盤に急激に生息数が減少したことが明らかになった(山田 2015)。しかし、2005年に施行された外来生物法によりマングースの防除事業が本格的に開始され、マングースは劇的に減少し、アマミノクロウサギの生息数が回復してきた(山田 2015)。本研究では近年のアマミノクロウサギの系統を調べることを目的としてミトコンドリアDNAのシトクロムb遺伝子領域(1140bp)とコントロール領域(630bp)2つの領域を対象に実験を行った。DNAは交通事故などで死亡した69個体(奄美大島:69個体、徳之島:2個体)の筋組織より抽出した(2008年10月~2015年2月)。コントロール領域はRongら(2003)の2本のプライマーを用いて増幅した。シトクロムb遺伝子領域はIrwinら(1991)の2本のプライマー並びにNCBIに登録されている塩基配列(AY292720)を基に設計した4本のプライマーを使用して増幅した。MEGA6.03により配列の整列、ハプロタイプを構成した。Network5.0を使用してハプロタイプネットワークを作成した。コントロール領域では21個の塩基置換、10個のハプロタイプが検出された。シトクロムb遺伝子領域では8個の塩基置換、7個のハプロタイプが検出された。ハプロタイプネットワークにおいて両DNA領域両方で、徳之島のハプロタイプが奄美大島のハプロタイプから分岐している結果となった。それぞれのネットワークではコントロール領域では奄美大島内に3個の集団が存在していると考察した。シトクロムb遺伝子領域ではネットワークが星状型であることから中心のハプロタイプが祖先であると考察した。ネットワークの構造が異なるのは両DNA領域の塩基置換速度の違いを反映しているものと考察した。