| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-B-033 (Poster presentation)
近年、都市における生物多様性の低下を受け、緑化の目的が人間中心から野生生物との共存へと姿勢が変化する傾向にある。そこで本研究では、都市においても市民が身近な緑地で関わり合うことのできる鳴く虫を用いて、都心部有数の大緑地である新宿御苑とその周辺の小緑地のハビタットとしての機能について調査することで、鳴く虫の生息に適した都市環境を解明することを目的とした。調査としては、セミ幼虫が羽化時に地中から脱出する際に形成する地表面の脱出痕の計数調査、およびコオロギ・キリギリスの分布調査を実施した。
セミの脱出痕計数調査では、脱出痕の確認数が地表面の脱出痕の発見の容易性に影響を受けているものの、高木本数の多い環境でセミの脱出痕が多い傾向があった。新宿御苑周辺の公園におけるコオロギ・キリギリスの分布調査からは、エコロジカルネットワークとの結びつきの強い昆虫種とそうでない種が存在することが示唆された。また、植生の階層構造が発達している公園では多くの種の生息を確認できた。新宿御苑内におけるコオロギ・キリギリスの分布調査では、周辺公園で確認されなかった種を多数確認し、樹林地、草地が組み合わさった緑地環境や草丈の多様性は、昆虫種の多様性に影響することが示唆された。