| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-037  (Poster presentation)

植生履歴が植物相形成に与える影響

*矢井田友暉(神戸大学・発達科学部), 田中健太(筑波大学菅平高原実験センター), 小黒和也(筑波大学菅平高原実験センター), 長井拓馬(神戸大学・人間発達環境学研究科), 内田圭(東大院・総合文化), 勝原光希(神戸大学・人間発達環境学研究科), 丑丸敦史(神戸大学・人間発達環境学研究科)

土地利用の変化は世界的な生物多様性減少の主要な要因である。土地利用の変化は通常経済活動の結果として起きる。スキーリゾート開発は山岳生態系の生物多様性に影響を与える土地利用変化と言われており、東アジア、ヨーロッパ、北米を中心にその影響が研究されてきた。
高山帯の自然草原や亜高山帯・山地帯の森林は、スキー場建設の際の、森林伐採、重機導入による掘削や人工降雪および土壌侵食を防ぐための外来種の播種によって土壌環境を劣化させ、植生を変化させるとの報告がある。
一方で、森林限界下におけるスキー場開発では、建設・管理方法によっては在来の草原生生物種へ代替的な生育・生息地を提供している可能性があるという報告がある。日本のスキー場は主に豪雪地域の山岳地帯や亜高山帯に建設され、森林伐採、掘削、外来種の播種が行われているが、斜面によっては放牧地や採草地であった場所をそのままスキー場へ利用することで重機による掘削や外来種の播種を伴わない場合があり、その場所が草原生植物の生育地環境として機能している可能性がある。この伝統的な草地を利用したスキーリゾート開発では、過去数十年間にわたり土地利用の放棄によって大部分が失われてしまった半自然草原生態系を今後も持続的に維持することが可能かもしれない。しかし、スキー場における土地利用履歴に着目した草原生植物の多様性・種組成の違いはまだ検討されていない。
そこで本研究では、元々の放牧地を継続利用したスキー場と、1940年〜1990年代にいったん放牧地が放棄され2次林化もしくは植林された場所を、さらに後年に開発して造られたスキー場を調査し、異なる土地利用履歴を持つスキー場で多様性や種組成の差異を示した上で草原生植物に対する代替生息地としてのスキー場の可能性について議論する。


日本生態学会