| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-B-041 (Poster presentation)
里山林内の開花植物と訪花昆虫を保全するためには、それらと周辺環境について調査し考察すべきである。そこで本研究では、滋賀県大津市瀬田丘陵地の里山二次林(龍谷の森)を調査地とし、訪花昆虫、開花植物、林床環境調査から、訪花昆虫が利用する林床環境の関係について解析した。
調査は開花植物と訪花昆虫のルートセンサス調査と林床環境調査を行った。ルートセンサス調査は、2016年4月~11月、週2日、9時~13時の間で約1.8km(20m×88区画)のルートを往復し、区画ごと観察された開花植物、訪花昆虫の記録を行った。林床環境、道幅、開空率の測定を行い、その計測値から林床環境要因、17項目と道幅、開空率の合計19項目を解析に用いた。
本調査では、開花植物50科129種(草本74種、木本55種)と訪花昆虫6目35科93種を記録できた(訪花昆虫利用区画88区画中80区画)。
目別の訪花昆虫出現種数に最も影響を及ぼしている林床環境要因を重回帰分析を用いて抽出した。全ての訪花昆虫の出現種数に共通した要因は、開空率と1年性草本被度割合でそれぞれが正の影響を与えていた。逆に負の影響をあたえている要因として高木常緑樹幹割合などが挙げられた。これは、開空率が林床の開花を保証する要因であるためと考えられる。また、高木落葉樹幹割合は、鱗翅目昆虫、双翅目昆虫には負の影響があるが、鞘翅目昆虫には正の影響があった。これは、昆虫による林床環境の利用の違いが影響するためであると考えられる。これらのことから、訪花昆虫の利用環境は、天空が開け、光が潤沢に当たる環境がモザイク状に存在していることの必要性が示唆される。光環境が豊かな林内パッチがあれば、開花が起こり、昆虫が訪花する環境を提供することができ、訪花昆虫の種の多様性維持にもつながる。植物は送粉を訪花昆虫に依存しているため、林床の光環境を良くし、訪花昆虫を多様に保つことが、生物豊かな里山を復活させることに繋がると考えられる。