| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-B-044 (Poster presentation)
近年、系統関係を考慮した群集解析が多様性の高い熱帯雨林の樹木群集についても行われるようになってきた。こうした解析には、群集を構成する種間の詳細な系統関係と各種の生態特性の両方のデータが必要である。しかし、多様性の高い熱帯雨林では、群集を構成する全樹種について詳細な系統樹が得られている例は少ない。既存の研究には、phylocomなどのソフトウェアを使って既存の系統情報を用いて作成した、多分岐を多く含む系統樹を使ったものも多い。一方で、多分岐を含み、かつ、多くの種からなる系統樹では、群集系統解析の結果が保守的になりやすい(統計的な有意差が出にくい)とされている。そのため、多様性の高い熱帯雨林の群集系統解析には、詳細な系統樹が必要と考えられる。そこで、本研究では、まず、ランビル国立公園の面積52 ha(500 m × 1040 m)の調査区に生育する全1186種の分子系統樹の作成を目指した。2013~2016年の期間に836種の各1~5個体から葉のサンプルを採取し、DNAバーコードに広く用いられている葉緑体DNAの3領域(rbcL、matK、psbA-trnH)の塩基配列を決定した。これまでに、rbcL 723種、matK 592種、psbA-trnH 472種で配列の決定が終わった。今回は、すでにアラインメントが完了したrbcLとmatKの塩基配列のみを用いて系統樹を推定した。系統樹の推定には、GARLI(Genetic Algorithm for Rapid Likelihood Inference)を用い、phylocomで作成した大まかな系統樹と今回得られた塩基配列データを組み合わせることで714種の系統樹を推定することができた。発表では、調査区内における各種のハビタット特性の系統関係と局所群集の系統多様性についての解析結果を、今回得られた系統樹と多分岐を多く含むphylocomの系統樹の間で比較し、熱帯雨林の群集系統解析における詳細な系統樹の有効性について議論したい。