| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-047  (Poster presentation)

ミャンマー中央平原の農山村地域における住民の森林利用と生物多様性との関係

*小林美月(広島大学・総合科学部), 三浦麻由子(広島大学・総合科学部), 堀金司(広島大学・総合科学部), 上田健太(広島大学・総合科学部), 山田俊弘(広島大学・総合科学部), 奥田敏統(広島大学・総合科学部), 天野正博(早稲田大学・人間科学), Ei Ei, Hlang(ミャンマー森林研究所), Kyi Kyi, Khing(ミャンマー森林研究所)

途上国において深刻化している森林減少・劣化を抑止する仕組みとして、REDD+(Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation)などのCO2排出削減を目標としたインセンティブメカニズムが稼働し始めた。しかしその導入に際して、森林保全を目的とするあまり、住民がREDD+対象域外に排除され、かえって排出源活動の拡大に繋がることも懸念される。本研究では、REDD+の導入に際し、住民便益を損なわない配慮をするとともに、森林の持つ炭素貯留量や生物多様性などをどうすれば高いレベルで保全できるか、という点について調査を行った。
調査はミャンマー中央部のM村周辺の森林を対象とした。対象地区の森林を住民の森林資源への利用頻度とそれに伴う攪乱強度、および資源を監督・管理する林業局の対応の違いに応じて、5つの森林タイプに区分し、合計39個のプロットを設置した。5つの森林タイプとは、森林官の監視下にある「監視のある二次林」、明らかに監視が及ばないと思われる「監視のない二次林」、林業局が試験見本林として整備している「管理プランテーション」、かつて商業木の植栽を行ったがその後維持管理が放棄され、現在は二次林化している「放置プランテーション」、地元住民の利用が入りにくい「村から離れた森林」である。全調査プロットで植生調査及び胸高直径≥5㎝の樹木を対象に毎木調査を行い、村31世帯に対し土地利用選好性を調べた。
地上部現存量は、森林タイプによる有意な違いが認められたが違法伐採量の有意差はなかった。また、地上部現存量と種多様性の間には負の相関関係が見られ、攪乱強度の高い森林内では種多様性が高かった。住民は生活圏域からの遠隔地では、炭素貯留量や生物多様性が高い森林を選好することが分かった。炭素貯留量の保全、住民便益、生物多様性の視点から、例えば遠隔地の森林と村周辺の森林を仕分けし、それぞれの地域で細かな森林資源管理を行うことが重要であるといえる。


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