| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-052  (Poster presentation)

インドー西太平洋域に分布する潮間帯性ヤドカリ・イソヨコバサミの生物地理学的研究

*吉川晟弘(京都大学), 池尾一穂(国立遺伝学研究所), 中野智之(京都大学), 朝倉彰(京都大学)

海洋生物の種の多様性は赤道付近のフィリピン、マレー半島、ニューギニアを結ぶコーラルトライアングルと呼ばれる海域で最も高くなることが知られている。しかし、この海域の種の多様性がなぜ高くなったのかということに関しては未だに定説はない。各々の生物はそれぞれに、彼ら独自の種分化の歴史を持っているため、種多様性の創出メカニズムを理解するためには様々な分類群において、その系統関係や集団構造を推定し、その周辺の地史と比較する必要があるが、十脚甲殻類の生物地理学的な知見は未だに少ない。そこで本研究では、最も一般的な十脚甲殻類であるヤドカリ(異尾目)、イソヨコバサミClibanarius virescens Krauss, 1843に見られる、コーラルトライアングル内における集団遺伝構造および種の分布変遷過程について明らかにすることを目的とし研究を行った。サンプルは、太平洋側からは本州房総半島以南の日本沿岸、奄美大島、沖縄から、台湾、フィリピン、インド洋側からはインドネシアのジャワ島およびロンボク島、タイのプーケット、ミャンマーの合計14地点から採集した。そして、各集団間の遺伝的分化の程度を調べるために、mtDNA、COI領域の解析を行った。その結果、太平洋側の集団はほぼ遺伝的均一であったが、インド洋側のプーケット集団が、他の集団間と比べて非常に高い遺伝的多様性が確認された。


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