| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-C-104  (Poster presentation)

奄美大島における録音データに基づく森林性鳥類の個体数推定

*井上遠(東大・農), 井上奈津美(東大・農), 吉田丈人(東大・総合文化), 鷲谷いづみ(中大・理工)

録音による鳥類モニタリング(録音法)は、現地での調査員の数が少なくてよいことや、多くの地点で一斉にデータをとれるため広域にわたって均質なデータを取得できることから、近年鳥類調査に活用されつつある。しかし、これまでは録音法は、出現種の把握のみに用いられることが多く、個体数を推定する手法を確立することが必要とされている。また、録音データの聞き取りに時間がかかるという欠点も指摘されている。本研究では、録音法による個体数推定の妥当性を検討するため、保全上重要な森林性鳥類が多く生息する奄美大島の森林域において、従来法(ポイントセンサス)と録音法の比較を行った。また、音声解析ソフトを用いた分析時間の短縮の可能性も検討した。

調査は、多くの種の繁殖期にあたる2015年4月~5月に、5か所の森林域で行った。それぞれの場所で3~7のポイントを設け、ポイントセンサス及び録音を朝と夜に実施した。録音データを聞き取り、リュウキュウコノハズク、およびアカヒゲのさえずった回数を聞き取りによって計測するとともに、リュウキュウコノハズクについては、音声解析ソフトを用いてさえずり回数の自動計測を行った。

両種において、聞き取りによるさえずり回数、および音声解析ソフトで自動計測されたさえずり回数ともに、個体数の指標になりうることが示唆された。ポイントセンサスでの推定個体数と同様に、録音法から得られるさえずり回数も天候や調査時間帯、調査時期の影響を受けており、これらの影響を考慮することで、より精度の高い個体数推定が可能であることが明らかとなった。


日本生態学会