| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-C-117 (Poster presentation)
動物の繁殖形態や子育ての様式は、卵を産んだままにするものから親が世話を行うものまで多岐にわたる。そのような多くの繁殖形態において両親が子にどれだけ投資するかという問題は生物の繁殖戦略を知る上で非常に重要である。だがこれまで子に対する親の投資量を定量した研究はほとんどない。ヤマトシロアリは一夫一妻で創設し、巣を離れることなく繁殖を続ける。さらに雄同士・雌同士でも協力して巣を作ることから、両性が繁殖にどれだけ寄与しているかを明らかにすることができる。本研究によって我々はシロアリを用いることで一夫一妻の子育てにおける雌雄の初期繁殖投資量を明らかにした。ヤマトシロアリのコロニーの創設期における卵と幼虫数の計測と、創設虫のタンパク質・脂質・腸内原生動物保有量の定量を1週間ごとに行い、雌雄・雄同士・雌同士の創設ペア間でその動態を比較した。その結果、雌雄ペアでは雄と雌が卵生産と幼虫給餌に等しく栄養投資をしていることが明らかになった。これは雌雄ペアと雌同士のペアでは栄養投資の動態はほぼ同じだったが雌1匹当たりの子の数は雌雄ペアで約2倍であったことから言えた。さらに雌雄と雄同士の栄養量の比較から雄の繁殖投資量が明らかになった。どのペアにおいても創設虫はコロニー創設後に腸内原生動物を増加させたのちにほぼ同時期に消化して再吸収しており、それが栄養源となっていた。雌雄・雌同士ではその栄養を子や卵に投資していた一方で投資先の無い雄同士では自らに蓄積していた。これらの結果から一夫一妻で巣から離れずに子育てを行う生物では雌雄が同等の繁殖投資を行うことが示唆された。