| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-C-124 (Poster presentation)
近年農業被害などが問題となっているイノシシの適切な防除や管理には、広域において利用でき持続的に容易に利用可能な密度指標が必要であるが、適切な手法が確立されていない.そこで本研究では、イノシシの採食行動の一つである掘り起こしの痕跡(以下:堀跡)を利用しての新たな密度指標の確立を目的とする.捕獲数や糞粒数、カメラトラップなどと比べ、堀跡は利用可能地域が限定されず発見率が高いうえに、導入コストもかからないため、広域でのモニタリングに適していると考えられる.掘跡は植生や微地形などの影響も受けるため,個体の行動圏内の小さな空間スケールの環境の効果を取り除くことで、大スケールでのイノシシの密度指標を作成した.さらに推定された密度指標を個体の行動圏を超える大スケールの環境データで回帰し、イノシシの密度に影響する大スケールの要因を解明した.
小スケール解析の結果、植生に関しては、広葉草本か裸地である地点や低木が少ない地点でイノシシの掘り起こし跡が高密度となった.地形に関しては集水面積や日射量が大きい地点において堀跡が高密度となった.また大スケール解析の結果、小田原市の明星ヶ岳や沼津市の鷲頭山などといった都市化傾度が中程度の地域においてイノシシの密度は高かった. このような密度分布は従来の知見と整合する.