| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-C-129 (Poster presentation)
生態学的時間スケールにおいて、生物の遺伝的集団構造は主に遺伝的浮動と遺伝子流動によって形成される。哺乳類を対象とした集団遺伝学的研究では、両性遺伝のnDNAと母系遺伝のmtDNAを遺伝マーカーに用いた場合に遺伝的集団構造に差異が見られることがあるが、その決定要因については深く探求されていない。本研究では、北海道本島の28集団のエゾヤチネズミにおいて、nDNAのマイクロサテライト(両性遺伝)5遺伝子座と680 bpのmtDNA D-loop領域(母系遺伝)を解析し、個体ベースモデルによる検証によって、集団構造の形成要因を明らかにすることを目指した。集団間の遺伝的距離 (slatkin’s RST)を決定し、Mantel検定を行ったところ、nDNAにおいては距離による隔離が支持された (p=0.039)が、mtDNAにおいては支持されなかった (p=0.590)。また、nDNAよりmtDNAによる方が多くの集団間で有意に遺伝的に分化していた。このことよりnDNAとmtDNAには遺伝的浮動と遺伝子流動の効果が異なって効いている、と考えられる。コンピュータシミュレーションによってその要因の候補として考えられている性特異的な分散行動が遺伝的集団構造に与える影響について考察する。