| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-D-135  (Poster presentation)

山陰の汽水域におけるニホンウナギの分布・定着要因に関する予備的調査

*山岸聖(島根大・院・生物資源), 秋吉英雄(島根大・生物資源), 吉田真明(島根大・生物資源), 福井克也(島根県水技セ・内水面浅海部), 高原輝彦(島根大・生物資源)

島根県の汽水域である宍道湖で漁獲されるニホンウナギは、宍道湖七珍の1つとして古くから地域住民に親しまれている。しかし近年、山陰地域のウナギの漁獲量の大半を占める宍道湖において、漁獲量が年々減少している。山陰地域に棲息するウナギが減少している原因を理解する上で、宍道湖・中海での定着要因および、日本海からの仔魚と親魚の流出入の解明が欠かせない。本研究では、ウナギが選好する場所の水質や、分布・定着に共通する環境要因を推定し、ウナギの生息に適した河川・沿岸環境の解明を目指している。そこで、宍道湖や中海、隠岐諸島を含む山陰の汽水環境における水質調査を行うとともに、環境DNA手法を用いた定点ごと・季節ごとのウナギの分布マップの作成と環境モニタリングを行った。環境DNA手法とは、水中生物の排泄物等に由来するDNAから、対象生物に特異的なDNAを測定することにより、その生物の生息域や量を推定する技術である。
2015年12月から2017年1月において、月に1回、宍道湖と中海それぞれ7カ所ずつで定点調査を行った。また、2016年6月、8月、9月に隠岐諸島においても調査を行った。その際、水温やDOなどの水質を記録するとともに、環境DNA分析用の水1Lを採取した。水サンプルはフィルター濾過により濃縮した後、フィルターの付着物からDNAを抽出・精製した。このDNA抽出液を用いて、定量PCRを行い、ウナギのDNAを測定した。その結果、各調査地点および、月ごとにおいてウナギのDNAの検出率や濃度に違いがみられ、宍道湖と中海のウナギは、分布の偏りや季節性があることが示唆された。現在、山陰の汽水域に遡上してきたシラスウナギの胃内容物から餌動物種組成を同定するDNAバーコーディング法の予備的検証も並行して進めており、ウナギが選好する餌組成から生息に適した河川・沿岸環境の解明についても報告する。


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