| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-D-146 (Poster presentation)
古くから人の手で維持されてきた我が国の半自然草地は、希少種を含む多様な生物の生息地である。しかし近年、管理放棄や土地改変に伴い、遷移の進行や分断化が深刻化している。こうした現状に際し、草地の内部環境(局所要因)および周辺のマトリクスや草地間の連結性(景観要因)に対する草地内部の生物の応答を評価することが急務となっている。
各環境要因への応答は生物種によって異なるはずであり、応答を評価する場合、種数や多様度指数だけでなく、個々の種の応答も評価すべきだと考えられる。そこで本研究では千葉県北総にパッチ状に点在する半自然草地40ヶ所において、複数種のバッタ類を対象とし、局所要因と景観要因に対する種数と個々の種の個体群密度および出現確率の応答を解明した。
その結果、種数には局所要因の影響のみが確認されたが、個々の種では局所要因に加えて、草地周辺に点在する他の草地との連結性による正の影響が見られ、個体数の底上げが示唆された。局所要因に関しては、種数は草丈との間に一山形の関係が見られたのに対し、個々の種は単調な増加または減少を示したため、種数のパターンは個々の種の個体群密度や出現確率の応答をそのまま反映していないことが明らかになった。また、草地ができてからの経過年数が長いほど、個々の種の個体群密度や出現確率が上昇した。これに関しては、2つの理由が考えられ、比較的最近にできた草地では、まだ個体群密度が平衡状態に達していない可能性と、過去の土地利用履歴が土壌や植生を介してバッタ類に影響した可能性を示唆するものである。