| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-D-147 (Poster presentation)
近年、少子高齢化や人口減少が社会問題として挙げられている。また、都市圏への人口集中から、都市郊外において空き地・未利用地が増えると考えられる。一方、老朽化が進むインフラの維持管理・更新の費用の負担が困難になることも予測され、今後の国土利用を考える上で、空き地・未利用地および既存のインフラを多機能なグリーンインフラ(GI)として活用することが重要であると指摘されている。本研究では都市の中の調整池とインフラとして利用される可能性のある空き地に着目し、単一機能のインフラから多機能なGIとしてどのような機能の付加が期待されるのか、その可能性を検討した。
まず、既存の治水インフラである調整池を対象に、湿地の動植物のハビタット維持と人が利用できる水辺空間の提供機能を満たすGIとしての多機能化を検討した。千葉県船橋市市内の計152箇所の調整池で「土壌の有無」、「立ち入りのし易さ」と容積,設置年代を調べた。「土壌の有無」と「立ち入りのし易さ」の両方を満たす調整池は9箇所あり、容量も大きかった。同規模のコンクリート製の調整池では更新・補修等の際に様々な機能を付加してGI化を検討できる可能性がある。すでに土壌面があり人の立ち入りも容易な調整池では、浅い池を造成することで、元来の治水機能に両機能を付加したGI化が実現できる可能性が示唆された。
また、千葉県白井市の、宅地開発が進む中で空き地・未利用地として残された場所を対象として、草原の生物へのハビタット提供および生態系調整サービスの提供における機能を評価した。市内の空き地・未利用地をGISデータ化し、地下水の涵養機能、ヒートアイランド現象緩和機能を評価した。また草原の生物多様性を指標する植物種を選定し、その分布を市民参加により調査するシステムを確立した。今後、これらの結果と土地所有者や管理形態の情報と統合し、GIマップの試案を作成する予定である。