| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-D-148 (Poster presentation)
近年、世界的に農地の耕作放棄が増加している。農地周辺の半自然草地においても、管理の放棄が高茎草本の優占や木本植物の侵入を促進し、植物多様性の減少につながることが指摘されている。日本において、放棄地は丘陵地の棚田等で増加しているが、棚田は半自然草地性希少種のホットスポットとなっており、放棄地増加はこれらの希少種のハビタットを大きく脅かしている。そのため、放棄以前に希少種が多くみられた放棄棚田において管理を再開し、希少種のハビタットを再生・保全していく必要がある。
2014年より、兵庫県神戸市と篠山市の耕作放棄棚田の畦畔において、管理(草刈り)の再導入による植生を効率的に行うための方法論確立を目指して、異なる管理方法を同時に行い、植生再生の違いを明らかにする野外実験を開始した。2015年までの調査により、植物種間で管理再導入や管理方法へのレスポンスの差が見られたが、この差は各種の持つ機能形質と関連することが考えられる。この関連を明らかにすることは特定の機能を持つ種群を保全対象とする場合の重要な知見となりうる。
本研究では、上述の管理再導入実験を行っている実験区と伝統地区を調査区とし、出現頻度の高かった87種の調査区ごとの開花パターンと機能形質(開花高・葉高・幅・SLA)、開花時期の関係から、異なる管理方法に対する種のレスポンスの差が特定の形質を持つことに起因するのかを明らかにすることを目的とした。
上述の対象種87種の管理区ごとの開花パターンに基づいてクラスター解析(Ward法)を行い、開花パターンの似た5つのクラスター(種群)を見つけ、種群間で測定した形質の比較を行った。この結果、開花パターン(どの管理区で開花頻度が高くなるのか)と機能形質に関連があることが示唆された。