| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-D-150  (Poster presentation)

湧水域小河川における水生植物各種の好適環境要因

*槐ちがや(筑波大・生命環境), 上條隆志(筑波大・生命環境系), 片桐浩司(土研・河川生態), 田中法生(国立科博・植物園)

 水生植物は淡水生態系において重要な構成要素であるが、その生育環境は農地開発や都市化の進行によって減少しつつある。特に湧水域小河川の多くは、湧水の影響が強いため、特異的な水生植物群落が形成されることが知られている。しかし近年、湧水域小河川において外来種が急激に増加していることが報告されている。そこで本研究では、外来・在来水生植物群落が多く存在する那須扇状地の湧水域小河川を対象として、それらの好適環境要因を明らかにすることを目的とした。調査は2016年7月12日から19日に那須扇状地(栃木県大田原市)の開水面幅が1m以上7m以下の湧水域小河川にて行った。調査対象の小河川に1×1mの調査区を一時的に設置し、植生と調査区内の環境要因(岸からのコドラートの中心までの距離・開水面幅・水深・底質の粒径(大礫・中礫・小礫・砂・シルト)・流速・水温・電気伝導度・pH・溶存酸素濃度・溶存二酸化炭素濃度)を計測した。また、調査区周辺の環境要因として水路の構造タイプを施設台帳および目視で確認した。統計解析は植生被度データ、調査区内の環境要因データおよび周囲の環境要因データを用いて正準対応分析を行った。結果、ノチドメ、イケノミズハコベ、ミズハコベ優占群落は溶存二酸化炭素濃度が高く、水温が低く、pHが低い環境に特徴づけられた。逆にオオカナダモ、コカナダモ群落は溶存二酸化炭素濃度が低く、水温が高く、pHが高い環境に特徴づけられた。以上より、ミズハコベ、イケノミズハコベ、ノチドメ優占群落の好適環境は、典型的な湧水環境(高二酸化炭素濃度・低温環境)であると考えられた。これと対象的に、低二酸化炭素濃度・高温環境に特徴づけられたオオカナダモ、コカナダモ優占群落は、湧水域小河川に特異的ではなく、これ以外の環境でも優占群落を形成できると考えられた。


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